1999/12/05
ただ客席は静まり返っていた。私もその中の一人だった。現状を認めたくない、信じたくない、夢であってほしかった。だが現実は「2部降格」ということである。試合開始前から独特の雰囲気だった。ただ誰もが信じていたはずだった。真っ赤に埋めつくされたスタンド。リーグ屈指のサポーターたち。試合が始まる少し前に到着してずーっと祈っていた「90分間での勝利、勝ち点3」を。試合の時間が近づき、スターティングメンバーの紹介。その中で1つの不安があった。「福田がベンチ」ということ。なんとも言えない不安感に陥る。不調とはいえでも、ここ重要な試合に点を入れてきたMr.REDSといえる福田が出ていない。さらに言うならば盛田と大柴がベンチ。チキと永井がFWで先発。後半かき回すために大柴はでるかも知れないと予想はしてた。ちなみにチキ(ベギリスタイン)はこの試合で引退が決まっていたのだ。不安な雰囲気の中、点を入れられないまま前半が終わる。ハーフタイムにグランドでボールを蹴る福田。後半すぐにはでないのか・・・。不安感はつのるばかり。後半もなかなか決められない。守るも田北の好セーブとDF路木達に救われる。ついに大柴投入、しかし点が入らず。ついには盛田を投入。これにはもう黙ってはいられなかった。「福田を出してくれ!!」と思わず叫んでしまう。ストレッチをしながら不安とプレッシャーと戦っているように見えるベンチの福田。残り10分でやっとグランドへ。時間がない。まわりの観客は携帯電話などで連絡が入り「ジェフが勝ちそうだ、アビスパは負けそうだ。」と。つまり残り10分で決着がつかなければ決定してしまう。そして10分はあっという間であった。異様な雰囲気の駒場だった。だれも口に出しにくい雰囲気だ。それでも延長戦が始まり、大声援の中戦う選手たち。そして広範になり、ついにすべてが決まった。延長Vゴールを福田が決めて。多くのサポーターが「これですべて決まった」と思っただろう。ゴールを決め抱きついてくる池田を振り払うガラスの貴公子福田。彼は誰よりも2部の辛さを知っている選手でもある。選手はグランドから引き揚げるが誰一人として変える雰囲気のない客席。そんな中画面には二節のハイライトがダイジェストで映しだされる。BGMにはエルトン・ジョンが歌うQUEENからの名曲"The Show Must Go On"が悲壮感を盛り上げてしまう(なぜか先日発売になった QERRN+ GREATEST HITS IIIの曲が使われている・・・)。1みんな待っていた、選手たちを。叫ぶサポーターもいるが、ほとんどは無言だった。多くのプレスが動きだす。最終戦と言うことで場内をめぐる全選手。けがをしている選手さえいる。多くの選手が目を赤くしていた。みんなが叫んでいた We are REDS ! 泣いている観客も目立った。私も泣きたかった。最後まであきらめていなかったから。涙でぐしょぐしょになる選手をサポーター達が励ます「泣くな!」「泣くな伸二!」と。すべての選手が引きあげ、言葉少なくみんなは引き上げはじめた。駒場から浦和駅の徒歩が重く、長く、永遠に感じた。結果を受け入れようとしても感情としていまいち認めたくない。頭の中が混乱した。ただ、サポーターとして、来期昇格のため応援し続けるということは理解できたのだった。悔しい、とにかく悔しかった。昇格というのは簡単ではない。しかしやってもらわねばならない。これを糧として精神面を始め慟哭を知る選手・チームとなりやり遂げてほしいと願うばかりである。プロは結果を出さなければならない、サポーターはそれを支えねばならない。